『現外|GENGAI』について詳しく見る

現外― 人智を超える、“熟成”の可能性

日本酒におけるヴィンテージの価値を体現する『現外』は、阪神淡路大震災を乗り越えたという出自や、20年を超える長い時間がもたらした味わいの変化など、いくつもの“奇跡”が重なり生まれた特別な日本酒です。

大震災を乗り越えて生まれた、奇跡の酒

『現外』が生まれたのは1995年、阪神淡路大震災の年です。震災により、日本三大銘醸地のひとつである兵庫県・灘五郷の酒蔵も甚大な被害を受けました。『現外』の醸造パートナー・沢の鶴もそのひとつです。

当時7棟あった木造の蔵のすべてが全壊し、商品の醸造や出荷を諦めざるを得ない状態。その中、奇跡的に残ったタンクのひとつに、日本酒のもととなる「酒母」がありました。一般的な日本酒造りでは、酒母を造った後、水・蒸米・麹を加えて発酵を進める醪(もろみ)造りという工程に移ります。しかし、醸造設備が被災したため、次の工程に進むことができません。

捨ててしまうか、残すか。

二択を迫られた蔵人たちは、“不確かな未来に懸ける”という決断をします。沢の鶴には、それまで培ってきた熟成酒の研究成果と知識がありました。その経験から、熟成による変化に一縷の望みを託したのです。

当初の味わいは、甘味のバランスが悪く、酸味の強すぎる不完全なものでした。復興への道筋の中、節目ごとにその味を確認するも、5年や10年では、その風味は開花しません。

しかし、20年が経つころから味わいが変化してきました。鋭い酸味は心地良く、べたつく甘味はまろやかに。甘味・旨味・酸味・苦味のすべてが調和し始め、造り手すら想像しなかった気品と透明感を併せもつ味わいがもたらされたのです。

“日本酒のヴィンテージ”という価値の提案

SAKE HUNDREDがこの日本酒と出会ったのは、2018年5月。沢の鶴から「飲んでほしいものがある」と連絡を受け、いくつかの熟成酒を試飲したときのことです。その中に、数々の日本酒をテイスティングしてきたSAKE HUNDREDブランドオーナーの生駒龍史がこれまで味わったことのない一本がありました。

それは、あまりにも特別な出自をもつ日本酒。酒蔵も扱い兼ねていましたが、生駒は確かな品質と大きな可能性を感じました。

日本酒の価値を構成する要素には、原料のこだわりや造り手の人柄、造られる土地の魅力などがあります。しかし、ワインやウィスキーなどでは一般的な「時間経過のもたらす変化」、つまり、ヴィンテージの概念はまだよく知られていません。

生駒は「この日本酒であれば、ヴィンテージの価値を提案できる」と感じ、SAKE HUNDREDから熟成酒の可能性を提案する商品として出させてほしいと打診。“現在の理の外にある、唯一無二の存在”という意味を込めて『現外』と名付けました。

想像を超える、熟成のマジック

時間が日本酒にもたらす変化には、大きな可能性があります。日本酒を適切な環境で熟成させると、化学反応により、色味や味わいが深く濃く複雑になっていきます。

ただし、その変化は未知数。この現象を思い通りに操作することもできません。「熟成に向かない」と思われていたものが美酒に変化することもあれば、その逆も起こり得る。「熟成のマジック」がもたらす味わいは、ひとつの奇跡と言っても過言ではない。そのポテンシャルは、計り知れないほど大きいのです。

26年の時を経た『現外』は、深みのある美しいアンバーの色味を帯びています。立ち上る香りは、複雑でいて芳醇。しっかりとしたアロマで、カラメルのような甘味、ビターチョコレートのような苦味、ドライフルーツやオリエンタルスパイスなどのニュアンスのある複雜で濃厚な熟成香が感じられるでしょう。グラスを回すと乳酸由来の酸味や、ミネラル感・旨味を思わせる香りも広がります。

口に含むと感じられるのは、甘味・酸味・苦味・旨味が一体となり円熟味を帯びたまろやかさと、透明感のある優雅な味わい。香りからもたらされる熟成の印象とはまた違った、心地よい酸味と甘味が印象的で、余韻のミネラル感が全体をまとめます。

「知らない人が飲んだら、日本酒とは思わないかもしれない」と評されたこともある、唯一無二の味わいです。

熟成とともに増す希少性

熟成酒を長年研究してきた沢の鶴は、26年熟成の『現外』について、「ひとつの完成を迎えたのではないか」と評しています。実際、2019年と2020年の『現外』を比較しても、品質は安定しています。

複雑で気品のある香りは変わることなく、飲み口がわずかになめらかになり、透明感が増しています。それは、100人が飲んでそのうち何人が違いに気付けるかというほどに繊細な差。今後は、10年ほどをかけてゆっくりと熟成が深まっていくのではないかと考えられます。

ただ、この『現外』は現在タンクにある分を出荷してしまうと、もうそれ以上、世に出すことはできません。SAKE HUNDREDでは、熟成が深まり、希少性が増すごとに価格を改定し、ヴィンテージ日本酒としての価値を高めていく予定です。

とはいえ、その熟成がどう進むか、正確な予測はできません。味わいのピークが数年で過ぎてしまうこともあれば、その逆もあり得るでしょう。その不確実性もまたヴィンテージの魅力でもあり、宿命でもあるのです。

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